春麗らかな晴れた日の朝、僕は早朝便の配達の仕事があり、車で走っていました。
ふと、前方車にならって走っていくと、すぐ前の4t車が停止し、ハザードランプを点けながらバックし始めました。4t車は駐車場に入庫するためにバックするつもりでしたが、後続車をあまり待たせてはいけないと、気を遣ったのでしょうか、かなりの勢いで後退しました。ところが、左右のミラーでは確認できない真後ろに、原付バイクが停まっていたのです。
(あ、危な~い!)
『ガシャガシャガッシャ~ン』
原付バイクは4t車の下敷きになってしまいました。が、間一髪で乗っていたバイクのお兄ちゃんは何とか難を逃れることができました。一瞬のできごとで、僕はバイクの代わりにクラクションを鳴らして警告しようとしましたが、勢いつけた4t車が停まれるはずがありません。まだ新しそうなそのバイクは無残にもグシャグシャになってしまいました。
とりあえず、僕はすぐに車を飛び出し、バイクのお兄ちゃんに怪我があるといけないので、歩み寄り声を掛けました。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「あっ、大丈夫っス!」
「おい、てめえどこ見てんだよ!<`ヘ´>」
怪我がないのはなによりですが、4t車の運転手に対しかなり攻撃的な対応です。ヘルメットをとると耳にはピアス、ニッカポッカの作業ズボン、刈り上げたヘアには『エックス型』に剃りこみが入り、口ひげを蓄えている割には眉毛はほとんど剃られています。十九か、二十歳か、とにかく若いそのお兄ちゃんは、現場で働く職人見習いのようで、血の気も多そうです。誰に似てるかと言われれば、EXILEのアツシといったところでしょうか。
一方、4t車から降りて来た運転手さんは、30前後で茶髪、ますだおかだの増田にちょっと似ています。背は高くありませんが、肩幅は広く、胸板も厚く、腕っ節は強そうです。
4t車の下敷きになってしまったバイクは、アスファルトとトラックに挟まれ、なかなか取り出すことができず、運転手のお兄さんと一緒に、僕も手を貸し、なんとか抜け出しました。その間、バイクのお兄ちゃんのほうは、警察に事故の通報の後、現場に遅刻してしまいそうだということを、携帯電話で連絡を取っています。
「あ、社長っすか、オレっすけど、超信じられないっすよ。なんかぁ、トラックが急にバックしてきてぇ、バイクがグシャグシャになってぇ、死ぬかと思いましたよぉ」
最近の若者の言葉遣いには、日頃から気になっている僕ですが、美しい日本語を使え!とまでは言わないにしても、これでいいのか?と思わずにはいられません。まあ、この場では状況が状況だけに特に気にも留めなかったのですが、この後、事態が急変しました。
「どうもスミマセンでした<(_ _)>」
「っつーか、てめえどこみてんだよボケ!<`ヘ´>!!」
トラックの運ちゃんが悪いのは否めないところですが、素直に謝っているところに、このセリフです。今度は運ちゃんが逆ギレしました。
「ぁん、あんだてめえ、そのクチに聞き方は?こっちは謝ってんだろうがぁ!<`ヘ´>」
歯を食い縛りながら、アゴを突き出し、鼻と鼻がくっつくほど接近した二人は、眉間にしわを寄せ、睨み合いをし始めました。まさに一触即発。
僕は慌てて二人の間に割って入りました。
「まあ、ちょっと待ってください。お互いに不慮の事故で苛立つ気持はわかりますが、幸い怪我も無く、そして怪我をさせることも無く、不幸中の幸いです。感情的になってもいいことはありませんし、ここは早期円満解決のために努めましょう、ね、ね。」
二人のそれぞれの肩に手を差し伸べ、さとすように落ち着いた口調で語る僕に、二人とも落ち着きを取り戻し、
「スイマセン、ちょっとカッとなっちまって・・・」
「こっちこそスミマセン・・・」
と、最悪の事態からは脱することができました。
後続の車からは好奇の目でじろじろと見られましたが、こんな時にかぎって誰も手を貸してくれませんから、何とか収まってくれてよかったです。
ようやくお巡りさんが自転車で駆けつけて、僕もお役御免となり、その場を去りました。最後には二人にお礼まで言われましたが、もしもバイクと共に彼が下敷きになってしまっていたらと考えると、交通事故の恐怖を改めて痛感するのでした。
みなさん、くれぐれも事故には気をつけましょう!
※写真はイメージ画像です。実際の事件事故とは関係ありません。
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